
「投資はリスクがあるから怖い。」
そんな声をよく耳にします。
もちろん、投資には価格が上下するリスクがあります。
でも私は、それ以上に大きなリスクを伴う状態があると思っています。
それは、十分な貯金がないまま生活することです。
もし明日から働けなくなったら。
もし会社が倒産したら。
もし家族が病気になったら。
そんな「もしも」が起きたとき、生活を支えてくれるのは投資の利益ではなく、生活防衛資金です。
今回は、資産運用よりも先に考えたい「生活防衛資金」の重要性についてお話しします。
実は「貯金ゼロ」の世帯は珍しくない
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の2025年調査によると、
金融資産を保有していない世帯は約20.5%です。
つまり、約5世帯に1世帯は金融資産ゼロということになります。
さらに年代別に見ても、
- 20代:約30.5%
- 30代:約22.5%
- 40代:約21.9%
- 50代:約22.7%
と、働き盛りの世代でも約5人に1人が金融資産を保有していません。
もちろん、住宅購入や事業への投資など、意図的に現金を少なくしている人もいます。
しかし、多くの家庭では「貯めたくても貯められない」というのが現実でしょう。
「何も起きない」が前提の生活はリスクが高すぎる
私たちは、目に見えるリスクには敏感です。
例えば、
- 株価が20%下がる
- 投資信託の評価額が減る
こうした話を聞くと、「投資は怖い」と感じます。
一方で、
- 来月も給料が入る
- 健康なまま働ける
- 会社は今まで通り続く
こうしたことは、無意識に「当たり前」だと思ってしまいがちです。
でも、本当にそうでしょうか。
病気やケガは誰にでも起こります。
会社の業績悪化やリストラも、自分ではコントロールできません。
親の介護や子どもの事情で働き方を変えなければならないこともあります。
つまり、貯金がほとんどない状態というのは、「何も起こらないこと」に人生を賭けている状態とも言えます。
これは、とても危険なギャンブルです。
普段はリスクが見えないだけで、実は非常に危うい状態なのです。
見えないリスクほど、人は過小評価してしまう
投資には「価格変動リスク」という名前があります。
だから、多くの人はそのリスクを意識しています。
では、貯金がほとんどない状態のリスクには名前があるでしょうか。
実際には、
- 収入が途絶えるリスク
- 生活が立ち行かなくなるリスク
- 焦って条件の悪い仕事を選ばざるを得なくなるリスク
など、人生に大きく影響するリスクがあります。
しかし、毎月給料が入っている間は、そのリスクは目に見えません。
人は「今まで大丈夫だったから、これからも大丈夫だろう」と考えやすいものです。
だからこそ、見えないリスクを過小評価してしまいます。
貯金がない状態は「常に綱渡り」をしているのと同じ
普段は何も起きません。
毎月給料が入り、普通に生活できます。
だから危険を感じないのです。
しかし、
- 病気やケガ
- リストラ
- 災害
- 家族の介護
- 大きな修理費や医療費
こうした出来事は、誰にでも起こる可能性があります。
そのとき、貯金がなければ生活は一気に苦しくなります。
収入が止まって初めて、「もっと貯めておけばよかった」と気付いても遅いのです。
社会保障があるから安心、とは限らない
日本には健康保険や失業給付、高額療養費制度など、世界的に見ても手厚い社会保障があります。
これは本当にありがたい制度です。
しかし、
- 給付まで時間がかかる
- 収入を100%補償してくれるわけではない
- 対象外となる支出も多い
という現実があります。
社会保障は「助けてくれる制度」であり、「生活を丸ごと支えてくれる制度」ではありません。
その空白期間を支えるのが、生活防衛資金です。
投資よりも先に備えたいリスク
「投資は怖い。」
そう思う方は多いでしょう。
でも、多くの家庭にとって本当に怖いのは、
収入が止まった瞬間に生活できなくなることです。
例えば、毎月30万円で生活している家庭なら、
- 貯金30万円なら約1か月
- 貯金90万円なら約3か月
- 貯金180万円なら約6か月
- 貯金360万円なら約1年
しか生活できません。
株価が20%下がることよりも、
生活費が底をつくことの方が、はるかに深刻なリスクではないでしょうか。
生活防衛資金は「人生の選択肢」を増やしてくれる
生活防衛資金は、お金を増やすためのお金ではありません。
自分もそうですが、家族の人生を守るためのお金です。
十分な生活防衛資金があると、
- 焦って転職しなくて済む
- ブラック企業を辞める決断ができる
- 病気の治療に専念できる
- 家族との時間を優先できる
つまり、お金だけではなく人生の選択肢が増えます。
私は、資産形成の本当の目的は、お金持ちになることではなく、
安心して人生を選べる状態をつくることだと考えています。
投資は生活防衛資金を作ってからで十分
新NISAなどの普及で、資産運用は以前より身近になりました。
それ自体はとても良いことです。
ただ、生活防衛資金がないまま投資を始めると、暴落時に生活費のために資産を売却しなければならない可能性があります。
それでは長期投資のメリットを活かせません。
だから私は、
まず生活防衛資金を確保し、その後に投資を始めることをおすすめしています。
まとめ
投資には価格変動というリスクがあります。
しかし、十分な貯金がない状態にも、「収入が途絶えた瞬間に生活できなくなる」という大きなリスクがあります。
しかも、そのリスクは普段は見えないため、つい後回しにしてしまいがちです。
だからこそ、資産形成の第一歩は投資ではなく、生活防衛資金を準備することだと私は考えています。
まずは家族と自分の生活を守る土台を作ること。
その上で資産運用を始めれば、暴落にも慌てず、長期的な視点で資産形成を続けられます。
なお、「生活防衛資金はいくらあれば安心なの?」という疑問については、私が目安としている「年間生活費+100万円」という考え方を次の記事で詳しく紹介したいと思います。
Wrote this article この記事を書いた人
エフ 男性
4歳の息子と2歳の娘を育てる2児の父。 2人目の誕生をきっかけに1年間の育休を取得し、家事・育児に全力で向き合う。 10年以上にわたり投資を続け、元本を倍以上に育ててきた。 「堅実な投資」と「合理的な節約」がモットー。 FP(ファイナンシャルプランナー)資格保有。妻は専業主婦。 家族との時間と、お金のゆとりの両立を目指している。